2014(平成26)年5月30日、6月3日 毎日新聞 朝日新聞掲載

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浄土真宗本願寺派の門主に就任する大谷 光淳(おおたに こうじゅん)さん(36)

 

約1000万人の門徒を抱える国内最大の伝統仏教教団、浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺、京都市下京区)の門主に来月就任する。「人口の多い都市部で、どのようにお寺を増やしていけるかが大きな課題」。若さを強みに宗派の更なる発展を目指す。

 

大谷光真門主の長男に生まれ、自宅そばにある本願寺派の宗門校、平安中・高校(現・龍谷大平安)に通学。法政大に進み、初めて親元を離れた。

 

「後継者」としての重圧が薄らぎ、自由に飲み会も楽しんだ。

 

都市生活の明るさ、楽しさと同時に感じたのは、仏教とそこに暮らす人々との「距離」だった。

 

同派が抱える全国約1万カ寺のうち首都圏はわずか400カ寺。京都や大阪と違って宗教関係の学校や木造の寺が少ないと感じ、月参りの習慣もないことに気づいた。

 

昼は大学、夜は築地本願寺の東京仏教学院(寺院の子弟ら対象の教育機関)に通った。子供を失った人や病気を抱えた人と学ぶ中で、浄土真宗の教えが多くの人の支えになっていることを確信。

 

「門主という立場で自分にできることがあるのではないか」。後を継ぐ決意が固まった。

 

「宗教離れ」が言われて久しい昨今、「葬儀に孫を連れて行かない人がいる」などと聞いては死を避ける風潮を憂えている。「『死』を意識して生きることこそ大事。今生きている時間やさまざまなご縁を大切にすることができるからです」

 

文・花澤茂人

写真・森園道子

 

 

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浄土真宗本願寺派の25代門主に就く大谷 光淳(おおたに こうじゅん)さん(36)

 

浄土真宗を開いた親鸞の子孫。

「お西さん」と親しまれる京都・西本願寺の境内で育った。6日、父・光真門主に代わり、門徒の数が1千万人とされる日本最大の伝統仏教教団のトップに就く。

 

「浄土真宗の教えが次の世代へと受け継がれていくよう、一つ一つを丁寧に務めたい」

 

門主後継者の自覚を深めたのは法政大の4年生の時。東京・築地本願寺にある夜間の東京仏教学院に聴講に通った。「子を亡くされた方、病気を持つ方、いろんな方が教えを学び、よりどころにされている姿に、私にしかできないことをしていこうと決めました」

 

高齢のトップが多い伝統仏教界にあって圧倒的に若い30代。3歳の長男の育児もするイクメンだ。

 

昨年まで6年間、副住職を務めた築地本願寺では、音楽ライブなどに顔を出し、20~30代の参加者とふれあった。「お寺に来るのは団塊の世代でも若いと言われる。世間一般でいう若い人への取り組みにも力を注ぎたい。たとえば、仏前結婚式は一つのきっかけになります」と語る。

 

地方では人口減や高齢化で門徒が減少。都市部では核家族化が進んで次世代へ信仰が受け継がれにくくなっている。「でも生老病死などの苦しみは時代や地域を問わず共通。苦しみを抱えながら生き、救われる道を示す浄土真宗の教えは現代に通じるはずです」

 

文・久保智祥

写真・伊藤菜々子

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