「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」
『平家物語』の語り出しの有名な一句です。
インドの祇園精舎には無常堂があり、その四隅の軒にさげられている鐘は、修行僧が命を終わろうとするとき「諸行無常(しょぎょうむじょう)」の四句の偈(げ)を響かせ、僧を極楽浄土へ導いたといいます。
このように、諸行無常は人生のはかなさ、生命のもろさ、そしてときには死を意味する言葉として、日本人になじみの深い語句となっています。
しかし、本来、諸行無常とは、この世のものはたえまなく変化し続けるという事実を、ありのままに述べたもので、仏教の真理のひとつなのです。
人が死ぬのも無常ですが、生まれるのも無常、成長するのも無常だというのです。不幸な人が幸福に恵まれるのも無常なのです。
万物は流転しています。だからこそ、努力するのであり、一刻一刻が貴重なのであり、限りある命を大切にするのです。
けっして、「無情」ではありませんぞ。
『くらしの仏教語豆辞典』より抜粋