A.現代ではそれほど悩む必要はありません。
お葬式には、忙しいなかであれこれと準備しなければならないことがいろいろとあるものです。どこに連絡しなければならないかを考え、死亡届を役所に提出し、遺影として使う写真を選び、と、かなり大変なものです。葬儀社の人が代行してくれるものもありますが、どうしても自分で考えねばならないものの一つに、「焼香順」というものがあります。
まず、喪主が先頭に立ち、大きな葬儀の場合ですと、葬儀委員長というものがある場合がありますから、その人が焼香し、次からは故人との関係からみて、近い親族から順に焼香することになっています。それに留焼香と呼ばれている、親族の最後に焼香する人は誰かということも決めねばなりません。これは家族以外の、一番近い親族が行う場合が多いようです。
親きょうだいなら、すんなりと順番は決まるでしょうが、遠い親戚となればなるほど、どちらが先かということが難しくなってきます。
しかし、昔の「家」というものが社会を構成していた家長制度の時代ならともかく、今は、焼香順など、そんなに頭を悩ませることでもないのです。ややこしいと思われるなら、留焼香だけは決めておいて、順不同で少しも構わないのです。喪主の後は、焼香台の近くに座っている者から順に焼香していけばいいことです。
代表焼香もそうです。親族の焼香が終わって、一般の焼香に移る際、代表焼香という各種団体の代表者の焼香が行われます。たとえば喪主が勤務している会社とか、地域の自治会などです。ただ、代表焼香の場合、かならずトップにくるのは、国会議員とか地方議員です。故人と面識もないと思われるのに、なぜかと不思議でならないのですが、何よりそれが最初にくるのは、いかにも官尊民卑の伝統のようで、私個人的には嫌いです。
それと、導師としておつとめをさせていただいている立場で言わせてもらえば、あの焼香順の読み上げというのは、本当に邪魔なものなのです。読経されている間は、普通は静かにしているものですが、それが葬儀になるとアナウンスの声によって読経の声がかき消されてしまうのです。これでは本末転倒です。葬儀の主役は焼香ではなく読経だということを忘れないで欲しいです。読経のなかを粛々と焼香が行われる。この方がずっといいですよ。そういうことを平然とやってしまっているから、葬儀が形だけのものとなり、葬式不要論にまでなってしまう一因でもあるんです。
-菅 純和著『葬式のはなし』より抜粋-